2013年06月03日

綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」

 たしかに今回の橋下市長の一連の発言は、繰り返されてきた過去の政治家たちの暴言や失言と比べてみても、“戦後最悪レベルの暴言”として後世に記憶されるに違いない。

 いまや「橋下単独犯行説」を決め込んで地下に潜ってしまった安倍一派だが、その流れは政権与党の政治家たちによってずいぶん以前からつくられていた。

 特に1990年代以降の日本社会は、「慰安婦」問題を直視せず、自国の加害の側面は扱うことさえも避けてきたのが実情だ。

 1997年に結成された団体「(自虐史観に基づかない)新しい教科書をつくる会」は、「従軍慰安婦」の教科書記述削除を目指した運動だった。その運動体と「南京大虐殺」でリンクしていた第一次安倍政権下の2006年にはついに中学校の歴史教科書から「慰安婦」という表記が消された(検定意見に従わないとパスしない。「集団自決」の軍命削除も同じ)。

 今回の橋下発言の決定的引き金になったのは、4月22日の安倍首相の国会答弁「『村山談話(日本の植民地支配と侵略を謝罪したい)』をそのまま継承しているわけではない」だ。(その後外国から歴史認識を問われ「受け継ぐ」と撤回)

 橋下氏にも歴史がある。同時期に弁護士・橋下徹はテレビにしばしば登場し、歯に衣着せぬ物言いが広範囲の層から「人気」「注目」を集めた結果、それを自らの政治的「支持」「委任」ととらえた傲慢さ、無謙虚さが、自身の歴史認識と人権感覚の本音を露呈することになる。

 橋下氏の言葉を追いかけていくと「彼を選挙で当選させているのは誰なのか?」という問いに行きつく。(それは大阪府知事に選んだ大阪府民であり、大阪市長に選んだ大阪市民でしょうということになるわけだが、それだけでは「維新の会」が衆院選で躍進したことの説明がつかない)

 彼らを支持した市民や有権者の歴史認識や人権感覚も問われているのだ。(参院選は近い)


綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」 
(沖縄タイムス6/4)



綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」 
(沖縄タイムス6/3)



【関連する日記アーカイブ】
2013.06.02  自民公約追加案に「育鵬社版歴史教科書」推奨か
2013.06.01   擬制の民主主義 自民と維新の同根
2013.04.22  「これで首長の思い通りの教科書が使えるようになります」 パート2
2013.03.02  八重山教科書問題に政府動く 「育鵬社教科書を使え」


6/4追記

下地&橋下の選挙用人気取りパフォーマンスには騙されない!

綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」
(琉球新報6/3、記事原文はこちら



綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」 
(沖縄タイムス6/4、記事原文はこちら



綿井健陽 「橋下発言から見える日本社会の内面」 
 (沖縄タイムス6/4)



6/5追記

琉球新報6/5社説 大阪訓練移転案 本質から目を背けるな 
下

         
大阪訓練移転案 本質から目を背けるな

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長と幹事長の松井一郎大阪府知事が、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練の一部を大阪府内の八尾空港で受け入れる構想を提起している。

 維新の会の勢力が最も強い本拠地大阪での提起だが、唐突感と違和感を禁じ得ない。自らの政治基盤強化のために、沖縄の基地問題を利用しているのではないかという疑念がくすぶるからだ。

 八尾市の田中誠太市長は「危険性が非常に高い。まだ機体の安全性が確認されていない」と述べ、反対姿勢をはっきり示した。

 橋下氏は「沖縄の基地負担軽減のため、オスプレイの訓練くらい本州で受けないといけない。大阪の話を出さないのは無責任だ」と強調したが、「できるかどうかは分からない。政府にボールを投げる」と実現可能性には自ら疑問符を付けた。

 橋下氏は、在沖米海兵隊の風俗業活用を奨励する発言や、旧日本軍の「従軍慰安婦」を容認した発言に対する国内外の厳しい批判にさらされ、政治家としての資質が厳しく問われている。

 今回の提案は、参院選挙をにらみ、沖縄の基地問題に取り組む姿勢を見せることで、維新の党勢衰退の窮地を抜け出す足掛かりにしたいという政治的思惑が色濃い。沖縄の負担軽減とは別次元の狙いがあり、成算も見えない。腰が据わっていないように映る。

 橋下氏は、大型連休の初めに来県した際、政策協定を交わした政治団体「そうぞう」の下地幹郎代表から、オスプレイの訓練の一部を本州で引き受けてほしいと打診されたことがきっかけと説明している。

 それならば、なぜ、大阪での訓練受け入れを提起したのが1カ月以上も過ぎてからなのか。説明がつきにくい。

 本土への訓練移転といっても数日にとどまることは目に見えている。一年中、オスプレイが飛び交う沖縄にとって、配備中止ではない訓練移転は根本的解決には程遠い。問題の本質から目を背けないでほしい。

 橋下氏は大阪府知事時代、米軍機訓練の関西空港への移転受け入れを探る発言をしていた。沖縄の痛みを引き受ける姿勢に打算がないというなら、オスプレイ部隊ごと普天間飛行場を県外・国外に移すと主張するのが筋だろう。
(琉球新報6/5社説、記事原文はこちら



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この記事へのコメント
6/4追記しました
Posted by ミチさんミチさん at 2013年06月04日 16:17
6/5追記しました
Posted by ミチさんミチさん at 2013年06月05日 20:08
 
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