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Posted by TI-DA at

2009年10月16日

2審も環境保護派が勝訴 泡瀬干潟埋め立て

  沖縄市の泡瀬干潟を埋め立てて開発する東部海浜開発事業に反対する市民ら516人が、県知事と沖縄市長に事業への公金支出差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁那覇支部であった。

  河邉義典裁判長は、「現時点で経済的合理性を欠く」として、知事と市長に公金支出の差し止めを命じた昨年11月の一審・那覇地裁判決を支持し、県と市の主張を退けた

 司法が再び事業の経済的合理性を否定したことで、事業を推進したい県と市の立場はいっそう厳しくなった。


・・・・・地元2紙の今朝の社説を紹介します。(太字等はブログ管理者の編集による)・・・・・


[泡瀬差し止め] 勇気ある撤退も選択肢


 従来の公共工事のあり方を見直すきっかけにしたい。

 沖縄市泡瀬干潟を埋め立てて人工島を造成し、ホテルなどを誘致する開発事業をめぐり、福岡高裁那覇支部は一審那覇地裁判決と同様に埋め立て費用の支出を差し止めた。

 判決は埋め立て事業の経済合理性を否定した。東門美津子市長が2007年12月に規模縮小を表明した後、新たな土地利用計画がないまま事業を漫然と進めることが違法だと判断したからだ。

 県、市の主張が説得力を持ち得なかったのはなぜだろうか。

 開発事業が完成するのは10年後で、そのころに沖縄を訪れる観光客は年間850万人に膨らむと予測している。現在より250万人上乗せされるという見通しは、これまでの増加率が向こう10年間持続するだろうという算定だ。

 観光客は新規よりリピーターが多く、今後も従来ペースで伸びるかどうか疑問がある。逆にアジアの発展で可能性は広がるかもしれない、という見方も否定できない。

 当初計画は現在約3日の観光客平均滞在日数を5・27日と高いゲタをはかせた。一審判決はこれを疑問視しながらも、県の諸資料を基にしたのであれば、かなり野心的な予測であっても「合理性を欠くとまではいえない」としている。

 今後、市が計画を策定し埋め立てを続ける道は残されている。ただ、経済合理性を確保するには「相当手堅い検証を必要とする」と高裁はくぎを刺した。

 市が埋め立てを継続することが果たして許容されるのかという疑問は一層深まった。

 裁判で浮かび上がった問題は、行政が集めた資料を積み上げて計画を策定すれば公共事業が成立する仕組みがあることだ。こうして進む地域振興策は、採算性よりも公共工事を実施することが目的化している、という批判も多い。

 無駄な事業の中止を主張する前原誠司沖縄担当相は就任後、八ツ場(やんば)ダム(群馬県)、川辺川ダム(熊本県)の現地視察に次いで、泡瀬を訪れた。東門市長との面談で前原氏は、「巨額の投資をしてペイできなければ住民負担としてのしかかる」と述べ、投資効果の再検証を求めた。

 市が検討している新計画は商業施設やホテルを核とした「国際交流リゾート拠点」と、スポーツ施設を中心にした「スポーツコンベンション拠点」を形成する2案だ。ペイできるだろうか。

 一、二審で公金支出差し止めを命じる判決が出てもなお、現場で作業が続けられる状態は看過できない。早急に工事を中断すべきだ。
 費用対効果を重視する政権を国民が選択したいま、行政は公共工事優先の発想を変える必要がある。

 環境破壊に対して社会の目は厳しくなっている。果たして南西諸島最大級の泡瀬干潟を埋める選択を市民は望んでいるだろうか。

 市が経済合理性を備えた計画に作り替えることが可能かどうかは疑問が残る。「勇気ある撤退」も視野に事業の再検証を急ぐべきだ。
(沖縄タイムス 10/16 社説 http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-10-16-M_1-005-1_001.html


泡瀬控訴審判決 経済振興の在り方再考を
合理性問う司法判断は重い
 
 中城湾港泡瀬沖合埋め立て(東部海浜開発)事業に対する沖縄市の住民らが事業を進める県と市の公金支出差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で福岡高裁那覇支部は、一審を支持し、公金支出は違法とする判決を下した。

 司法は再び、経済効果の見込めない事業の停止を求めた。合理性を問う判決を重く受け止めたい。

 昨年11月の那覇地裁の「現時点で事業は経済的合理性を欠き、支出は地方自治法などに反し違法」とした判決を踏襲するもので、費用対効果のない公共事業の執行停止をあらためて明確にした。

【民意重視の計画に】 
 事業の経済効果を明らかにするために控訴した沖縄市と県だが、高裁支部は新たな土地利用計画は調査、検討がまったく行われていない、と疑問を呈し、現行の埋め立てにも「予算執行の裁量権を逸脱している」と指摘した。

 前原誠司沖縄担当相(兼国土交通相)は、「1期(区)中断、2期中止」を表明していた。「中断」について「中止ではない。控訴審判決を見ながら、県や沖縄市と相談して判断したい」とし、控訴審判決も考慮するとの立場だった。

 加えて「仮にペイできない事業だと判断しても、沖縄市の方々がそれでも税で負担していいとの意見が出れば、考え方も変わってくる」と民意も重視する意向を示していた。

 司法の判断は二審も同様だったが、国交相も判決を受け、住民の事業に対する意向を早急に把握し、方向性を示してもらいたい。

 事業は、中城湾港新港地区の港湾でしゅんせつした土砂を使い、国と県が沖縄市泡瀬沖合の約187ヘクタール(第1区域約96ヘクタール、第2区域約91ヘクタール)を埋め立てて人工島を造る計画だ。

 沖縄市の計画を基に1988年に策定された事業は、当初陸続きで340ヘクタールを埋め立てる計画だった。地元の意向もあり、95年には沖合150メートルの出島方式となり、規模も縮小された。

 国を挙げて浮かれたバブル経済さなかの計画は、その後、空虚感が重くのしかかった経済環境と、国の財政悪化も伴い規模縮小や棚上げといった紆余(うよ)曲折もあった。

 東門美津子沖縄市長が主張してきた「市の西側は米軍基地があり、発展の場は海にしかない」との訴えは、基地の重圧を受ける自治体の悩みとして理解はできる。だが、費用対効果が認められる事業の推進が重要だ。

 東門市長は、2007年暮れに「第1区域は土地利用計画の見直しを前提に推進、第2区域は推進困難」と表明した。今年4月に市民による見直し部会、5月に専門家などでつくる検討調査委員会を設置し、土地利用計画の見直し作業を進めている。年度内の新たな土地利用計画を策定する。

【環境生かすまちづくりを】 
 開発は、まちづくりに有効とされる手法だ。だが、恵まれた自然を残すことも、訪れる人たちの心を和ませ、まちづくりの新たな可能性を見いだすことができよう。

 韓国ソウルの清渓川(チョンゲチョン)は、環境の視点で注目された復元事業だ。朝鮮王朝時代から存在し、大雨ではんらんし、ひどい汚染で埋め立てが計画され、1976年には河川に蓋(ふた)をかぶせるように高架道路が完成した。

 道路の安全性と大気汚染、騒音公害の解消から環境に優しい都市を目指し、都心のオアシスとして復元された。交通中心から、人間中心の都市に生まれ変わるソウルの努力は、ブランド価値まで高める契機となった。

 政権交代した鳩山内閣は、費用対効果を得られない事業は認めない方針だ。民主党が総選挙で主張してきた無駄な事業の根絶として、政府は群馬県の八ツ場(やんば)ダム、熊本県の川辺川ダムの中止を矢継ぎ早に打ち出している。政府は、沖縄だけを聖域化するわけにもいくまい。東門市長の主張する米軍基地による他県にない特殊事業があってもだろう。

 まちづくりの視点も広げたい。東門市長は、市の西側にある極東最大の米空軍嘉手納基地の縮小を求め、その中で経済振興の転換を図る新たな計画を模索することも必要ではないか。

 泡瀬干潟は希少生物が生息し、琉球列島では最大級の干潟とされる。

 環境を軽視できない時代だ。大規模開発による「経済効果」でなく、「環境保全」によるまちづくりへの見直しを進めてもらいたい。
(琉球新報 10/16 社説 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-151326-storytopic-11.html



  


Posted by ミチさん at 14:48Comments(0)泡瀬干潟埋め立て

2009年10月08日

「流れ弾注意!」は生きている

米軍新射撃場 流弾の危機が増すだけだ 

 地元や県民の反対を無視し、米軍は金武町のキャンプ・ハンセン内レンジ3にライフル射撃場を新設した。県民の生命、安全に新たな危険を及ぼしかねず、早急な撤去を求めたい。

 新射撃場は伊芸区から約1キロ、沖縄自動車道からわずか500メートル。ライフルの射程距離や新射撃場の射程1200メートルを考え合わせると、あまりに距離が近過ぎる。

 伊芸区民の不安は深刻だ。同区はレンジ2、3、4、5、16など実弾射撃場に囲まれ戦後、被弾事故が多発している。事件のたびに演習場撤去を訴え続ける中での新射撃場建設は、住民感情を逆なでし、新たな負担を強いるものだ。

 外務省は「施設は3方向を壁で覆われ、射撃方向は北西の恩納岳だけ。民間地域へ銃口が向く可能性はない」としているが、直ちに信用はできない。県内の度重なる流弾事故の際に米軍、日本政府は再発防止策の徹底を約束したが根絶されていないからだ。

 昨年12月にも同区内の乗用車から銃弾が見つかり米軍の銃弾と鑑定されたが、米軍は訓練との関係を否定し、うやむやのままだ。

 いくら安全策を強調しても人為の訓練であり、銃口が民間地区に向く万が一の懸念はぬぐえない。実弾訓練の安全を保障するには最低限、銃弾が届かない距離が確保されるべきだ。

 キャンプ・ハンセンは今回の射撃場新設だけでなく、米軍再編に伴う陸上自衛隊の共同使用も始まった。建設が強行された都市型戦闘訓練施設は、伊芸区民の反対でレンジ16に新設され移転される。

 米軍再編がうたう「負担軽減」に逆行し、キャンプ・ハンセンは基地・訓練強化が進み、地元住民の重圧は増すばかりである。 

 米軍の実弾射撃場が過度に集中し自衛隊の共同使用も加わる訓練の過密さ、流弾の懸念をぬぐえぬ不安な現状は、憲法が保障する「生存権」を脅かすものと言っても過言ではない。

 都市型訓練施設や新射撃場計画に町、県議会が反対決議を重ねたが米軍は建設を強行した。フェンスの外で反対を訴えても、米軍は意に介さず訓練を実行する。

 住民に危険を押し付ける根源は、米軍に基地の自由使用を認める日米地位協定にある。このような現状は対等な日米関係とは言えない。政府は住民の立場に立ち基地問題の解決を図るべきだ。

・・・・・琉球新報10/4社説より(太字等はブログ管理者の編集による)・・・・・
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-150696-storytopic-88.html



(琉球新報 2009.2.10)


  


Posted by ミチさん at 22:54Comments(0)反基地