2013年04月22日

「これで首長の思い通りの教科書が使えるようになります」 パート2

4月17日のブログ(「これで首長の思い通りの教科書が使えるようになります」)に対して
まず、東京書籍の教科書がどうなのか、育鵬社の教科書がどうなのかの説明が必要と思われます。ここに来ている人には、何もご存知ない方もいらっしゃると思いますので。
というコメントをいただきました。
2年以上にわたって「八重山教科書採択問題」をフォローしてきましたが、その流れの中で書いた17日の内容が、ご指摘の通り問題の背景や経緯がブログのカテゴリーやタグ検索ではたどれないことに気づきました。

ここでは育鵬社版公民教科書「新しいみんなの公民」の内容の特徴と問題点を列挙すると膨大なものになるため割愛しますが、参考になるかと思いますので過去に別の拙ブログで取り上げたものを再掲します。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2011年11月22日のブログです ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2007年文部科学省は、それまで検定を合格していた五社七冊の高等学校用歴史教科書に対して、沖縄戦における日本軍の強制による集団死(いわゆる「集団自決」)についての記述を改めないと合格させないと検定意見を付けた。なぜこれまでの検定方針を突然変更したのか、当時大きな問題になった(当時は自公政権)。

 あれから5年、今度は国境の防衛で揺れる沖縄県八重山地方で、これまで行われてきた教科書採択の手続きが突然変更され、その変更を指示した人物の意中の教科書が採択されることになった。住民不在で進められた今回の採択問題について文科省は異議を唱えていない(現在は民主党政権)。

 もっと以前には、教育現場の式典で日の丸を掲げ君が代を斉唱することは強制しないと言っておきながら、現在は厳しい行政指導のもと、従わない教員は処分の対象になっている。

 2006年には、世界に誇れる「教育基本法」が全面改訂された。その翌年には防衛庁が防衛省に格上げされ、その長たる防衛大臣は閣僚のひとりとなったのである。

 “軍事力によって国を守る、国が守れる”と考える政治家たちが現在、国の中枢に少なからずいる。
国民の総意で政治を進めるのが民主主義国家であるため、彼らはどうしても国民の意識を少しずつ少しずつそちらの方向に変えていく必要があり、そのために次代を担う子どもたちの学校教育の現場にいろいろなものを持ち込もうとしている。

 この国のかたちが少しずつ変えられて行く、その兆候がさまざまなところで表れている。小さな動きは小さな声で進められるが動きが大きくなれば大きな声で進められる。

大きな声が聞え出す前に、市民がしっかり知る努力、考える努力、自分の思いを伝える努力をしようじゃないか。

声はもうだいぶ大きくなっているよ


やんばる(県北部)でも、あちこちで市民による自主学習会が開かれています。問題になっている育鵬社の中学公民の教科書を実際に手にとって、これまでの教科書とどこがどう違うのか。子どもや孫がどんな勉強をこれからしようとしているのか。なぜいま変えなければいけないのか。そんなことについてみんなで疑問を出し合っています。

先日名護市であった勉強会に参加してきました。
<中略>  詳しい内容はコチラ → http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/e15613634a66a2d3343e58d8f9ef8486

育鵬社の教科書が登場する前にも紆余曲折がありました。
そもそもは1996年、「新しい歴史教科書をつくる会」という社会運動団体が作られたことに始まります(Wikipedia)。

そこから生み出された自由社と育鵬社
自由社側が育鵬社はここがダメだというおもしろい youtube を見つけました。
みなさんが学校で勉強したものとはずいぶんちがう、両社の教科書のことがいっぱつでわかるすぐれものです。全部で6本あります。1本10数分ですから、できたら全部見て。また感想など聞かせていただけたらうれしいです。 http://youtu.be/S_kvk06cjtk


【関連する日記アーカイブ】
  ※上に度々登場した2006年や2007年と安倍晋三内閣の在任期間(2006年9月26日 ~ 2007年9月26日)がピタッと一致します。、知っていました?
2007.06.23 (第一次)安倍内閣の正体は  下
「日本の将来を担う子どもたちが、『従軍慰安婦に日本軍が関与』や『沖縄県民の集団自決に日本軍が関与』という記述がある教科書を使うのはおかしい」
そんなきっかけで97年2月に当時の自民党議員が中心となってつくられたのが
『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』だった。今から10年前のことです。

この「若手議員の会」の名簿をみると、現在の安倍政権の顔がずらりと並んでいる。
代表の中川昭一(53)は自民党政調会長、事務局長は安倍晋三(52)その人、副代表の松岡利勝(62)は先日自殺した農水大臣、安倍の下にいた事務局次長の下村博文(52)が官房副長官、幹事長代理の高市早苗(46)は内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)、委員に名を連ねた長勢甚遠(63)は法務大臣、菅義偉(58)は総務大臣、渡辺喜美(55)は行政改革担当大臣に就いている。また根本匠(56)は首相補佐官。オブザーバー名簿の塩崎恭久(56)は官房長官。

 現在の安倍内閣とは、つまり日本の教育を根本から変えようとしている「若手議員の会」内閣なのである。

 この安倍内閣になってから、自公民の多数議席にモノをいわせて、急ピッチで「教育基本法」が新しく作り変えられ、「教育関連3法」も先日改正された。この内閣が異常なまでに公教育に固執し、歴史教育を捻じ曲げてまでも進めようとしている新しい国づくり・人づくりとはどういうものか、しっかり考えないと大変なことになる。

2007.10.26 「教科書検定の黒幕 日本近現代史の場合」 下
 
今回問題となった沖縄戦についての検定意見原案を作った調査官は、日本史担当の村瀬信一氏です。主任調査官は照沼康孝氏。いずれも伊藤隆東大名誉教授の教え子です。
 「伊藤一門」のすべてが「つくる会」を支持していたわけではないが、学界における師弟関係は絶対的なものがある。彼らが伊藤氏を批判することなどありえない。要するに「つくる会」があろうとなかろうと、伊藤氏の影響力がある限り、今回のような検定がいつでも起こりうるのである。

 伊藤氏は扶桑社版『新しい歴史教科書』の執筆・監修者です。現在は「新しい歴史教科書をつくる会」理事を降り、安倍晋三前首相のブレーンだった八木秀次氏らの「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有志の会」に参加しています。
 註:言うまでもなく今回問題になっている検定作業はすべて安倍晋三政権(官邸主導政権)のもとで行われていました。当時、日本会議・国会議員懇談会の事務局長だった下村博文衆院議員は、日本政策研究センターのシンポジウム(06.8/29)で「安倍さんの教育改革は官邸機能を強化して行なわれる」「自虐史観に基づいた歴史教科書も官邸のチェックで改めさせる」と発言し、同年9月26日に安倍内閣官房副長官に就任しています。

 伊藤門下生が歴史認識の問題で物議を醸した例は過去にもありました。1998年に高知大教授から主任教科書調査官に転身した福地惇氏(現「つくる会」副会長)です。福地氏は現職の調査官でありながら検定最中に雑誌に登場し、「教科書検定のときに近隣諸国条項というのがあって、日本は侵略戦争をして悪かったと書いていないとまずい。そういうがんじがらめの体制になっている」などと攻撃しました。マスコミが大きく報じ、批判の世論が高まる中、文部省(現在の文科省)は同氏を解任せざるを得なかった。

<今回の文科省の不可解な検定意見について、たいへん参考になるブログ>

ブログ「世界の片隅でニュースを読む」より
2007.09.30 教科書改竄の「黒幕」 http://sekakata.exblog.jp/6242975/
2007.10.03 教科書検定の徹底検証を http://sekakata.exblog.jp/6257254/
2007.10.07 沖縄戦の「集団自決」に関する教科書検定問題の資料 http://sekakata.exblog.jp/6275871/



11/24追記
琉球朝日放送のニュース映像(動画)
2011.11.23 八重山教科書問題で県民集会  下
八重山地区の歴史教科書の選定を巡る問題で、県退職教職員会は18日、沖縄戦の記述が不十分だとしてふたつの出版社の教科書を採択しないよう声明を発表しました。

声明は「沖縄戦を捻じ曲げ、戦争を美化するような教科書を沖縄県民自らが選択することは、犠牲になられた御霊への冒涜。子どもたちを戦争の道へと誘導するような教科書は断固不採択にするべき」と訴えました。会見を開いたのは、県退職教職員会のメンバーなどおよそ20人です。

声明では育鵬社と自由社の教科書が、沖縄戦の最中に起きた集団自決の記述に日本軍の強制や関与の事実が書かれていないことなどをあげ、採択しないよう訴えました。

中学校の歴史教科書の選定を巡っては、八重山の採択地区協議会が突然、学校関係者を選定メンバーから外したため、その背景に特定の教科書を採択する意図があるのではと教職員たちから反発の声が上がっています。

また、有志の会・呼びかけ人の津多則光さんは「自由社・育鵬社の教科書は沖縄の歴史や現状を正しく学ぶことのできる教科書とはなっていません」と話します。

八重山出身の教職員ら160人で作る有志の会も要請書を協議会などに送りました。今回の問題は八重山だけの問題ではなく、沖縄戦の実相を捻じ曲げるものだと危機感を示しました。

有志の会では要請書は18日付けで、八重山採択地区協議会と協議会を構成する各教育委員会に送ったということです。協議会の教科書の採択は8月23日の予定です。

    ・・・・・・・・・・・・・・・以上2011年11月22日のブログ再掲終わり ・・・・・・・・・・・・・・・


「東京書籍」についての説明が上にはありませんでしたが、
石垣市長と石垣市教育長らが動き、八重山の採択地区協議会によって、突然一方的に学校関係者が選定メンバーから外される前まで採択されていた従来の教科書が「東京書籍」ですので、どんな教科書か大体想像はつくかと思います。現在全国の多くの自治体が採択しているものであり、みなさんが使ってこられたものとほぼ同じものと考えていただいていいかと思います。


7/10追記
下のスクロールバーを左右に動かしてお読みください
「これで首長の思い通りの教科書が使えるようになります」 パート2 
(沖縄タイムス7/10)


八重山教科書採択問題の3人のキーパーソン(教科書)のうち、石垣市の玉津博克教育長は沖縄タイムスの取材に対し、「ノーコメント」でした。






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Posted by ミチさん at 00:03│Comments(4)八重山教科書問題
この記事へのコメント
ご多忙の中、ご回答ありがとうございます。
よく解りました(私自身は知っていましたが….)

ただ、私個人としては、もう、日本という国に対して絶望に近い思いを抱いています。
Posted by 質問した者です。 at 2013年04月22日 20:23
お世話になります。
とても分かり易く、再掲載もありがとうございました。
Posted by おさんぽかい 伊禮より at 2013年04月23日 21:08
7/10追記しました
Posted by ミチさんミチさん at 2013年07月10日 23:22
お久しぶりです。
育鵬社の公民の教科書を見ていましたが、
内容が出鱈目ですね。
中に、「江戸しぐさ」なるものが、
「古きよき日本の風習」として記載されています。

ただ、少しお調べ戴ければすぐに解りますが、
全くの事実無根です。

そういう事実無根の記載を平気でする教科書を残しておいていいのか、
(採択するしない以前の問題です)
真剣に考えられた方がいいかと思います。
Posted by 憂いのヤマトンチュ at 2013年10月17日 09:03
 
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