2010年09月18日
沖縄にとって菅氏再選の意味
(琉球新報9/18)
(沖縄タイムス9/18)
沖縄地元2紙の「菅改造内閣」についての社説です
菅改造内閣 「普天間」対応も改革が必要
菅直人首相が内閣改造を実施し、民主、国民新党の連立による新たな内閣が発足した。
17人の閣僚のうち、10人を交代させる大幅な改造だ。
民間人の片山善博・前鳥取県知事を総務相に起用、代表選で激しく争った小沢一郎元幹事長を支持するグループからの入閣は、経済財政担当相に海江田万里氏らにとどめ、“脱小沢”色を一層鮮明にしている。
代表選の論功人事、年功序列、党内対策を優先した組閣と映る。
党内抗争が起これば、国益を損なう事態に陥る。党内抗争のしこりを国民に回してはならない。
亀裂が深まる党内を立て直し、挙党体制を築き、急を要する円高・株安対策、財政再建問題などに臨めるか。菅改造内閣の危機管理力と課題解決能力が試されている。
沖縄の諸問題に関係する大臣も交代した。前原誠司国土交通相は外相となり、後任には馬淵澄夫副大臣を昇格させ、沖縄北方担当相を兼務させた。
一方、仙谷由人官房長官、北沢俊美防衛相は留任した。
菅首相は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を推進する立場だ。代表選再選後も、日米合意踏襲の姿勢を重ねて表明している。
小沢元幹事長が代表選で、日米再協議の必要性に言及した際、前原、北沢の両大臣は共に発言をけん制し、日米合意順守の立場を表明している。
12日に行われた名護市議選で、辺野古移設に反対する稲嶺進市長を支持する与党が過半数を占めた。
この期に及んでも菅首相は「名護の皆さんの一つの民意の表れと理解している」としつつも、辺野古移設の方針を堅持する姿勢を変えていない。仙谷官房長官、北沢大臣らも地元説得に全力を挙げる姿勢を見せている。
新しく馬淵大臣が加わったものの、「普天間」をめぐっては沖縄にとって期待感に欠ける布陣だ。県民には失望感すら漂う。
名護市議選でも明確に示された通り、沖縄の民意は県内移設反対だ。日米合意の実現は不可能だ。
繰り返すが、新内閣のやるべきは沖縄の民意を正しく受け止め、日米合意を撤回することしかない。
その意味では普天間返還・移設問題をめぐる菅改造内閣の思考や発想の大改造が必要だ。対米追従から県民本位の安保論議を強く求めたい。 (琉球新報9/18社説)
[菅改造内閣] 政策目標はっきり示せ
菅改造内閣が発足した。
参院選敗北後、手付かずのままだった党役員人事では、しぶる岡田克也外相を説き伏せ幹事長に起用。閣僚人事では、存在感を増しつつある仙谷由人官房長官を内閣の要として留任させた。
内閣を「菅―仙谷」コンビで固め、党を「菅―岡田」コンビで運営する新たな布陣は、「鳩山―小沢」体制のときに顕著だった二重権力構造を解消するための人事、だといっていい。
政策の推進力を高めるためにも、政策に関する意思決定をスムーズに行うためにも、政府と党が役割分担を明確にし、協力関係を強化していく必要がある。
代表選が終わって党内の権力闘争が一段落するかと思ったら、そうではないようだ。
小沢一郎前幹事長との距離ですべてが推し量られ、グループ分けされ、それをマスメディアが「反小沢」だの「脱小沢」だのと繰り返し報じる今の政治状況は、あまりにいびつだ。
現職の首相よりも無役の小沢氏の動向のほうが注目され続けるという主客転倒の政治に終止符を打たない限り、民主党政権はいつまでたっても安定しないだろう。
鳩山政権から菅政権に代わって、民主党政権のめざす方向性が見えにくくなった。理想主義から現実主義への転換だと指摘する人もいるが、「民主党政権だからこそ」の政策が必要だ。
参院選後の政治の停滞は深刻である。臨時国会では、めざす政策目標を、はっきり示してもらいたい。
外相には前原誠司沖縄担当相が横滑りした。沖縄事情に詳しいだけでなく、外交・安全保障の分野にも通じている。沖縄にとっては、「望ましい相手」というより「手強い相手」といったほうがいいかもしれない。
名護市議選で市長支持派は議席を増やし、過半数を制した。市長と市議会が足並みをそろえて「辺野古反対」の旗を掲げるのは、普天間移設問題が浮上してから初めてである。
普天間問題の情勢が変化したのは明らかであり、「辺野古ありき」の議論を根本から見直す時期を迎えている。前原外相は、変化の意味をしっかり胸に刻み、長期的な視点に立って問題に取り組んでほしい。
国土交通副大臣から国土交通相兼沖縄担当相に昇格した馬淵澄夫氏には、しがらみのない清新さや問題解決に向けた馬力を期待したい。
参議院で過半数を占める野党とどのように向き合い、ねじれ国会を乗りきっていくのか。
菅改造内閣の最大の課題は、首相自身の指導力と国会運営、この2点に尽きる。
憲法で定められた衆院の優越は、参議院で野党が過半数を占めることによって極めて限定的なものになっている。参院の比重が高まり、手足を縛られた状態での政権運営を強いられているのである。
当面の課題は景気と雇用対策だ。補正予算の編成をためらうべきではない。ねじれ国会の下での「合意形成」は大きな試練になるだろう。(沖縄タイムス9/18)
Posted by ミチさん at 23:25│Comments(0)
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