2010年08月07日
続「アメとムチ」の構図 ~砂上の辺野古回帰~⑫
「黙認」の背景
過半世帯が軍用地主 分収金の恩恵共有
辺野古区は入会地を軍用地として提供する際、一部の土地を各世帯の人数に応じて分筆した。このため、当時の住民はすべて軍用地料の恩恵をこうむるかたちになった。
長い年月の間には土地を手放したり、親から受け継がない人も出てくるが、現在もかつての名残で過半数の世帯は軍用地主といわれる。
名護市軍用地等地主会によると、会員約600人のうち、半分近くが辺野古区関係者だという。県内でも、辺野古区は軍用地主世帯の割合が際立って高い。
地目によって単価が違うため一概には言えないが、分筆された一人分の土地からは年間数十万円の地料が支払われているという。私有地の分と合わせ、100万円単位の地料を得ている区民も珍しくない。
当然ながら、行政委員の多くも軍用地主としての顔を合わせもつ。地料をもたらすキャンプ・シュワブの返還を求める声は区民からはまず聞かれず、新基地建設についても「黙認」する人の割合が高い。
区の「容認」の背景には、こうした辺野古区の特殊性があることも見逃せない。
分収金の管理運用を含め、もともとは生活に身近な問題に効率よく対処するための機関だった行政委員会。それが、移設計画の浮上とともに、国策と向き合う権限も一手に握る巨大な組織に変ぼうした。
辺野古区の住民組織「命を守る会」の初代代表を務めた西川征夫は「今の行政委員会のあり方はまるで独裁。住民自治を取り戻すには、分収金管理を分離させることや、重要事項は区民総会で決める仕組みに改めることが必要」と提言する。
分収金制度がある本島北部では、共有林を軍用地に接収された当時の旧住民やその子孫らでつくる財産管理団体が、この収入の一部を数十万円単位で定期的に会員に分配するところが少なくない。
辺野古区でもこうした住民への還元を念頭に、財産管理組合の設立が検討され始めた。区と財産管理団体が一体化した現在の制度では、新しく移住してきた人まで分配の対象になりかねないためだ。
ただ、市軍用地等地主会会長で行政委員でもある島袋利治は「同じ地域に住みながら、分収金の恩恵に浴する人と浴さない人が出るのは好ましくないのではないか。住民間で分け隔てなくやってきた辺野古の良さが失われかねない」と懸念も示す。(敬称略)
(続「アメとムチ」取材班)
Posted by ミチさん at 00:43│Comments(0)
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