2010年08月07日

続「アメとムチ」の構図 ~砂上の辺野古回帰~⑩

行政委員会

特定の有力者に実権 民意反映に疑問も


 辺野古区では「行政委員会」が最高意思決定機関とされ、その動向を見極めようと、普天間移設関連の決議のたび、多数のマスコミ関係者が詰め掛ける。

 「地元の地元」として、対外的な発言力を持つ同区だが、その「公的な装い」とは裏腹に、特定の有力者に実権が集中し、区全体の民意が正確に反映されているとは言い難い内実も浮かび上がる

 交付対象となる市町村の米軍再編への協力度合いに応じて支給される「再編交付金」を規定する米軍再編特別措置法の成立を間近に控えた2007年5月15日。沖合移動にこだわる市長島袋吉和が環境影響評価(アセスメント)の早期実施に難色を示し、交付金受給に不透明感が漂う状況を払しょくしようと、辺野古区行政委員会は、1999年に可決したヘリポートの陸上案と埋め立て案の反対決議取り下げを決めた。

 移設反対派の区民は騒然となった。半月ほど前の区民大会で、区長大城康昌は反対決議の取り下げを行政委員会に諮る、と区民に説明していた。口頭での突然の表明だったため、区民からは異議も出ず、区民大会は閉会した。が、行政委員会では、そのことをもって「反対なし」との扱いで反対決議取り下げが処理されていた。

 これに抗議するため、区民有志は2週間ほどで112人分の反対署名を集めて行政委員会に提出。翌2008年4月の区民大会で、住民組織「命を守る会」の初代代表を務めた西川征夫が「私たちは自分たちの運命まで行政委員会に預けていない。区民の討論も経ずに行政委員会だけで決定することは、あまりに独断が過ぎないか」と訴えた。

 だが、行政委員会はその後も取り合わなかった。

 辺野古区(約450戸)では、住民の代表(行政委員)でつくる定数18人の「行政委員会」が最高意思決定機関として絶大な権限をもつ。20歳以上の区民ならだれでも参加できる区民大会もあるが、議決権はない。近隣の豊原区や久志区では、より多くの区民が参加する区民総会や戸主会が行政委員会よりも優越するのと対照的だ

 辺野古区の場合、行政委員は10班まである各班から、選挙などによって1人ずつ選ばれるほか、婦人会長や老人会長、区出身市議などが選任される。行政委員会の下には、分野別に九つの特別委員会があり、区の対応を集中的に話し合う。

 移設問題を扱うのは「代替施設等特別委員会」だ。所属する8人の行政委員には地域の実力者たちが顔をそろえ、行政委員会としての方向性は事実上、ここで決まる。今年5月の辺野古区の条件付き容認決議も、代替施設特別委の委員長を務める古波蔵廣の意向が強く働いている。(肩書は当時、敬称略)
(続「アメとムチ」取材班)




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Posted by ミチさん at 00:19│Comments(0)反基地
 
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