2010年07月01日

アメリッポンという名の怪物

アメリッポンという名の怪物 
(沖縄タイムス6/29)



     
[日米首脳会談]押し潰される「小の虫」


 菅直人首相とオバマ米大統領の初の日米首脳会談がカナダで開かれた。両首脳は、日米共同声明に基づいて米軍普天間飛行場の辺野古移設を着実に進めることで一致したという。

 日米合意が既成事実のように語られているが、日米共同声明は、鳩山政権末期に、地元沖縄の意向をまったく無視して、頭越しに発表されたものだ。

 仲井真弘多知事も、稲嶺進名護市長も日米合意を認めていない。かって県内移設を容認していた自民党、公明党も反対に転じている。

 多大な負担を伴う軍事飛行場建設にもかかわらず、地元の同意が得られていないのである。これは日米合意の致命的な欠陥であるだけでなく、正当性を疑わせるものだ。

 普天間問題をめぐる日本・米国・沖縄の三者関係は、実に異様である。成熟した民主主義社会の中で、この異様さは際だっている。

 沖縄側から見ると、日米両政府は、民主主義の最低限の手続きを無視し、住民の声を踏みにじるようにして、基地を無理矢理、沖縄に押しつけようとしているように映る。

 アメリッポンという言葉は「アメリカ」と「ニッポン」の合成語で、「対米追従」「対米融合」などを意味するが、アメリッポンという名の怪物が、自分の利益を優先して「小の虫」を押し潰(つぶ)そうとしているようにも見える。

 日米両政府は、地元の意向を無視した拙劣な手法が、住民の尊厳を深く傷つけ、問題解決を困難にしていることを知るべきである。

 復帰後の歴代首相で、沖縄の基地問題に忘れがたい足跡を残した首相が2人いる。自民党の橋本龍太郎首相と民主党の鳩山由紀夫首相である。

 橋本首相は、外務・防衛両省幹部の反対を押し切って、普天間飛行場の返還問題を米側に提起した。「地元の頭越しに進めることはない」と明言したのは橋本首相である。

 鳩山首相は、自公政権の下で日米が合意した辺野古案(V字形滑走路案)を白紙に戻し、普天間問題を国民的な課題として考え直す機運をつくった。

 基地問題を動かそうとした両首相の試みが、結局のところ、失敗に終わったのはなぜなのか。その総括が必要だ。  菅首相は、鳩山政権の下でぎくしゃくした日米関係を立て直すのに躍起である。だが、辺野古移設をどのようなプロセスで実施していくのか、負担軽減にどのように取り組んでいくのか、具体策は何一つ明らかにしていない。

 普天間問題をめぐる住民意識は昨年の政権交代で劇的に変わった。仲井真知事は、県内移設反対の県民大会に参加し、参院選では県内移設反対の島尻安伊子候補を支持している。県内容認の公約を掲げて知事選に出馬するのは事実上不可能な情勢だ。

 知事が反対すれば、公有水面埋め立てによる飛行場建設はできない。埋め立てを伴わない辺野古陸上案に対しては、地元住民が強く反対している。辺野古移設に固執すれば、またしても無駄な時間を浪費するだけだ。沖縄タイムス6/30社説



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Posted by ミチさん at 01:37│Comments(0)反基地
 
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