2010年01月15日

タイムス連載 迷走「普天間」インタビュー(2) 佐藤 優

琉球新報に「ウチナー評論」を毎週連載している佐藤優氏が、沖縄タイムスのインタビューでこんなことを言っていたので紹介します。最後の集団的自衛権のところは???ですが、他のところはなかなか示唆に富んだ提言だと思いますので紹介します。

タイムス連載 迷走「普天間」インタビュー(2) 佐藤 優
(沖縄タイムス1/9)


民意見極めている首相 沖縄は今、勝っている


 米軍普天間飛行場の移設問題は、民主党の小沢幹事長が昨年12月28日に「あの青い沖縄のきれいな海を汚してはいけない」と発言したことで、フェーズ(段階)が変わった。辺野古移設を否定するこの発言を、かつて辺野古を決めた鈴木宗男衆院外務委員長に伝え、自己否定させた意味は大きい。

 鳩山由紀夫首相が移設先の結論を5月まで先送りしたことにメディアや専門家の批判が集まっているが、あれは立派な決断だ。鳩山さんは普天間問題に関してまったくぶれていない。

 メディアが「ぶれている」と書くのは、四則計算(+、-、×、÷)しかできないからだ。日米合意は辺野古移設だが、鳩山首相は総選挙で「県外、国外」を公約した。足して2で割ると、辺野古の沖合への微修正だろうと。鳩山さんはこういう計算はしない。彼は東大工学部で偏微分方程式(未知の関数を含んだ微分方程式)を毎日、解いていた。その中の大きな変数が「沖縄の思い」ということだ。

 沖縄が黙れば変数は小さくなり、声が大きくなれば変数も大きくなる。沖縄を主体とした方程式をつくっていた。流れを見ていた小沢さんが、最終的に辺野古はダメだと決めたんです。

 この闘いは反軍・反基地・反安保の闘争をやったら、県民は負けると思う。民主主義をめぐる闘争、「民意はどこにある」という闘争にしなければならない。

 いま沖縄には2つの民意がある。1つは「県外・国外移設」という、沖縄タイムス、琉球新報と圧倒的大多数の県民、8月の総選挙で勝った4人の国会議員の意見だ。もう1つ、正当な選挙で選ばれた仲井真弘多知事に反映されている「沖合移動があれば(辺野古受け入れは)やむを得ない」という民意がある。このどちらが沖縄の民意かを決める時間を与えることは当たりまえだ。

 今の米軍再編は2006年に、ネオコンの連中がつくった世界地図に基づいて組まれている。そのうち2つの大きな要件が変化している。1つは馬英九政権が発足した後の台湾と大陸(中国)の接近。もう1つは、明らかに動き始めている米朝国交正常化交渉だ。中台問題と北朝鮮は、在沖米海兵隊の存在理由。この2つの要件の変化も、鳩山さんの偏微分方程式に組み込まれている。

 私は右派、保守派の人間として、日米同盟の堅持と軍事力による抑止力を真剣に考える立場から、沖縄の民意を尊重して辺野古は絶対にダメだと思う。

 なぜなら、敵意に囲まれている基地を造って日米同盟を強化できますか?基地機能が果たせますか?このことを辺野古移設に賛成している人にも理解を得て、県民が一致団結して声を上げることが重要だ。

 実は今、沖縄は勝っている。一昔前なら、昨年11月のオバマ米大統領訪日前に辺野古移設の決定を強行されて終わり。少なくとも年内には決まっていた。


 国家間の国際約束には2種類ある。法的拘束力を持つ「条約」と、法的拘束力のない「合意」。海兵隊のグアム移転協定は国際法的には条約だ。対して普天間の辺野古移設は日米間の政治合意でしかなく、重みが違う。政治意志で変更することが可能だ。小沢発言を受けて、外務省国際法局はすでに辺野古を落とす(除外する)準備を始めていると聞いている。物事は動いている。私は外務省にいたから官僚の動きがよく見える。

 県外・国外移設は沖縄の「地域エゴ」との指摘もあるが、そもそも国家は地域エゴのぶつかり合いで成り立っている。しかも沖縄には「平和」「戦争を起こさない」という大義名分がある。堂々と主張すべきだ。民主主義は数の論理だから、国民の1%にすぎない沖縄県民が何も言わないのは圧倒的に不利だ。

 一方、日本が沖縄に関して米国に譲ってもらうと、それに対する見返りをしないといけない。そこで集団的自衛権の行使が出てくる可能性はある。より機動的に自衛隊を海外へ派兵する形を整え、総合的に日米同盟を強化する目的だ。

 実は護憲、とくに憲法9条を守る意味もある。集団的自衛権は憲法上、国家として持っているが、内閣法制局の解釈として行使できないとなってきた。憲法を変えずに解釈の変更で済ませば、9条の文言を変える必要が無く、結果的に憲法を守れる。この議論も、最終的には国民の判断を尊重すべきだろう。(聞き手 政経部・吉田央)(沖縄タイムス1/9掲載)



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Posted by ミチさん at 00:37│Comments(0)反基地
 
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