2010年08月21日
沖縄の軍用地が国有地でないということは
(琉球新報8/20、記事全文はコチラ)
米軍用地借料 「20年」契約は長すぎる
被害と受益の乖離解決を
沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)と防衛省が米軍用地借料をめぐり対立している。防衛省による米軍用地借料の減額提示がきっかけである。
国家財政が逼迫(ひっぱく)する中で「地価下落時の単価アップは困難」とする国。「米軍用地は国の安全保障に寄与する極めて公共性の高い土地」として、軍用地料を財政事情や地価評価とは別次元のものと値上げを求める土地連。
軍用地20年契約更新も目前だ。両者の主張を検証し在沖米軍基地問題を考える契機としたい。
「2012年問題」の重み
県によると本土の米軍基地の9割近くが国有地だが、沖縄は3割強。6割強が公・民有地で、全体の3割強が民有地。高い公・民有地依存が本土と違う在沖米軍基地の大きな特徴である。
約4万500人の県内の軍用地主のうち94%(3万8千人)が土地連に加入し、その大多数が国との「期間20年」の軍用地の賃貸借契約を結んでいる。
一方で契約拒否地主も約3600人に上る。拒否地主に対し国は実態として沖縄にしか適用されない駐留軍用地特措法で使用権原を取得し、「強制使用」している。
期間20年の現在の賃貸借契約は2年後に満了する。政府が「2012年契約更新問題」と呼ぶ重大な節目を間もなく迎える。
契約更新の対象者は3万6千人に上る。膨大な更新手続きの期限内更新には本年度開始が必要で、防衛省は「10年度は契約更新の協力を得る上で極めて重要」な年度と位置付けている。
防衛省は「仮に借料の水準が見直されることになれば、12年に賃貸借契約の満了を迎える沖縄の多くの土地利用者の理解と協力が得られず、同契約の更新は極めて困難」としていた。
「従前からの協力者に対しても駐留軍用地特措法を適用せざるを得なくなる」ことを警戒してのことだ。
それにもかかわらず、防衛省は11年度の軍用地借料を本年度比0・2%減の約908億円とする減額案を土地連に提示した。
前年比3・19%(約29億円)増の約939億円を要求していた土地連は、初の減額提示に「国との信頼関係は損なわれた」として「12年の契約更新を最後に更新は行わない」(土地連三役)と反発している。前代未聞の衝突である。
防衛省の減額提示には行政刷新会議の「事業仕分け」の影響がある。会議では軍用地料について「常識的に地価が下がれば単価は下げるべきだ」「沖縄の特殊性を勘案しても地価下落の中で単価の上昇は合理的説明がつかない」など引き上げ反対、「本年度は据え置き」の意見に加え、「平成4年の借料568億円まで、4割削減が可能」との大幅減額要求も出た。
投資目的化に批判も
「仕分け」では、政府が契約更新対象地主に支払う「更新協力費」もやり玉に挙がった。
土地連は更新協力費を1人当たり50万円要求しているが、「仕分け」では「売買目的で取得された地主」「金融商品化した上での所有者」には「支払うべきではない」との意見が出ている。
地価下落の中、一貫して上昇する軍用地料が軍用地の投機・投資対象化を招いた実態も浮き彫りになっている。
「米軍による強制収用、過重な米軍基地負担に対する被害補償、償いの意味から軍用地料は一貫し引き上げてきた経緯がある」と元防衛省首脳は証言している。
同首脳は「本土在住の地主も増え、基地被害と基地利権、受益の乖離(かいり)が進んでいる」と指摘する。
「被害救済・補償の意味合いが薄れ、投機対象化した今、軍用地料はもはや聖域ではない」との認識だ。
基地被害は軍用地主以外の県民全体に及ぶ。沖縄本島の2割を占拠する広大な基地が「県経済発展の阻害要因」と県は強調してきた。ならば12年以降さらに32年までの長期間、米軍基地の存在を認める軍用地の契約期間は、あまりに長すぎないか。
一度契約に応じれば、国が地代を減額しても20年は契約解除できない。一方で不要となれば国は跡利用や返還後の十分な地主補償もないまま一方的に返還してくる。
沖縄の将来を左右する問題だ。地主とともに県民全体に禍根を残さぬよう論議を深めたい。(琉球新報8/21社説)
【続報】2010.08.23
(沖縄タイムス8/23、記事全文はコチラ)
Posted by ミチさん at 11:11│Comments(0)
│米軍用地契約更新