2010年08月23日

続「アメとムチ」の構図 ~砂上の辺野古回帰~(24)

民主の基地政策
 
野党時代の立場変更 再編交付金を維持


 米軍普天間飛行場の移設予定地キャンプ・シュワブと久辺3区の汚水などを共同で処理する下水道整備計画の調査費2670万円は、島袋吉和が名護市長を務めた2009年度の米軍再編交付金が充てられた。同計画はその後、現市長・稲嶺進が同事業費を含む10年度の再編交付金の新規計上分を削除したことで白紙化されたものの、地元の要望は消えたわけではない。

 1950年代に区などがキャンプ・シュワブ受け入れの条件として「米軍の余剰電力や水道の利用」などを挙げてから半世紀がすぎた今、基地受け入れの代償となる「アメ」は、地元業者に注がれる大型の箱もの中心の公共事業を経て、下水道処理施設の整備といった生活密着型の振興策に回帰しつつある姿を映し出しているようでもある。

 地元区からも「箱ものはもういらない」との声が聞かれる中、政府は「次の一手」として、より生活に密着し、一般住民が恩恵を実感できる「気の利いた振興策」を移設先の地元に集中投下する方途を模索している可能性もある。

 沖縄担当相の前原誠司は3月の閣議後会見で、全般的な沖縄振興は基地と切り離すべきとの従来の考えを示しつつ、米軍普天間飛行場の移設に限っては「迷惑施設となる基地を受け入れることへの感謝を込めた経済振興策はあり得る」との見解を示している。

 民主連立政権は再編交付金について、自民議員からの「(米軍基地の負担と振興策を)リンクさせないというのであれば再編交付金の廃止が必要」との質問主意書に対する2009年11月の答弁で、「普天間飛行場移設問題の検証作業を含む米軍再編の取り組み全体の中で検討する」と明言を避け、現在も廃止の意向は示していない。

 民主党は、再編交付金を規定する米軍再編特別措置法の採決にあたって「自治体の受け入れ表明を交付の条件とすることが想定されており、国民の税金の使い方として問題があると言わざるを得ない」などとして反対に回った経緯もある。

 同法を審議中だった07年4月の衆院安全保障委員会で、参考人として証言した沖縄大学名誉教授の新崎盛暉(沖縄現代史)は、再編交付金の在り方について法案に反対の立場から「(自治体の対応は)国の言いなりになるか、値を釣り上げるためにごねるということしか残らなくなる。いずれにせよ、自治体の自律性が大幅に損なわれる危険性をはらんでいる。『アメとムチ』というより『麻薬とムチ』だ」と批判した。

 新崎は政権交代後の民主のスタンスについて「普天間移設問題に関しても同様だが、政権をとるや手のひらを返したように野党時代のスタンスを変える民主は政治的誠実さを欠く。民主はこれまでの主張と整合を保つのであれば、再編交付金を見直す必要がある。米軍基地の負担と振興策をリンクさせないという方針と矛盾する手法があってはならない」と指弾する。
 

 その上で「沖縄では米軍統治下から自民、民主政権へと時代は移っても、一皮むけば本質は同じ『アメとムチ』の政策が継続され、それが基地の維持強化につながっている」と基地政策の普遍性を射抜く。 (敬称略) 

 (続「アメとムチ」取材班)=第1部は終了。9月中旬から第2部をスタートします。



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Posted by ミチさん at 22:51│Comments(0)反基地
 
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