2009年12月03日

沖縄密約証言 「国家のうそ」が暴かれた

1972年の沖縄返還をめぐり米軍基地跡地の原状回復費用を日本政府が肩代わりするなどとした日米両政府が交わしたとされる「密約」文書の存否が争点となっている『沖縄密約情報開示訴訟』の第4回口頭弁論が1日東京地裁で開かれ、原告側証人として吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)が出廷し、密約があった事実を証言した。

日本政府が従来存在を否定してきた密約の事実を当時の外務省の交渉担当者が法廷の場で認めたのは初めて。

この道を開いたのが今年6月16日の第1回口頭弁論の杉原則彦裁判長の「メディアに『密約の存在』を明らかにしている吉野文六・元外務省アメリカ局長を証人に招くよう原告側に促す」発言だった。

翌日の在京6紙のうち「密約文書開示訴訟」を報じたのは『朝日』『毎日』『東京』3紙で、『読売』『日経』『産経』3紙は全く扱っていなかった。

以前から、この種の報道は、沖縄に比べて本土マスコミは殆ど取り上げず、沖縄と本土の情報格差が大きいと言われ続けてきたが、果たして今回はどうか?

沖縄タイムス12/3社説(太字等はブログ管理者の編集による)
[沖縄返還密約] 暴かれた「国家のうそ」

 「歴史を歪曲(わいきょく)するのは、国民のためにならない」
 沖縄返還交渉に絡む密約の存在を認めた当時の外交責任者は、そう語った。政府の行為について歴史検証が難しい現状は、民主主義の標準装備を欠いている。

 沖縄返還の日米交渉をめぐる密約文書の開示を政府に求め、元毎日新聞記者の西山太吉氏(78)ら25人が起こした情報開示訴訟の口頭弁論。機密指定の文書に手書きのサインが残っている吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)が、「米側と文書を取り交わした」と密約の存在を証言した。

 証言の後、記者会見で古老の元外交官は「大きな歴史には貢献できないだろうが、真相を語ったつもりです」と話した。

 裁判所での当事者の証言は、密約を否定してきた政府の虚偽を暴く決定打となるはずだ。吉野氏の証言を受けて、鳩山由紀夫首相は、文書の確認ができた時には公開すると約束した。

 密約文書は、米国で1994年に大統領令で公文書の秘密指定が解除され、情報公開された。時間の経過によって機密文書を開示し、国民の負託に応えようとする。

 一方、日本政府はその後も「文書を保有していない」「存在しない」と言い張ってきた。

 おそらく、外国政府との交渉事には当時の情勢によって秘匿とせざるを得ない判断もあろう。しかしその行政行為の是非を後世にわたり検証できないようでは、お上天国がまかり通る。

 返還密約は、本来米国が払うべき旧軍用地の原状回復費400万ドル、海外向け短波放送「VOA(ボイス・オブ・アメリカ)」の施設移転費1600万ドルなどについて、日本が肩代わりするというものだ。

 明らかに返還協定に違反する不必要な支出であり、国民への背任に当たる。

 吉野氏はこう語った。

 「当時の米国の財政事情が悪く、米議会の中に『日本になぜ金を払う必要があるのか』と疑問視する意見のあったことが原因と思う」

 日米の当時の力関係の中で、沖縄返還のため政府は清濁あわせのんだのか。その検証をなおざりにすると同じ過ちに歯止めがかからない。

 原告はこの密約が米軍に対する「思いやり予算」などの「巨額な財政負担の源流」と指摘する。この視点を照らすと、日米が米軍再編で合意した在沖海兵隊一部のグアム移転経費の支出が適正なのかとの疑いを抱かざるを得ない。

 沖縄返還だけでなく、日本の「非核三原則」を形骸(けいがい)化させる核持ち込み密約の存在も米公文書で明らかになっている。民主党政権が外務省に調査を指示し、間もなく結果が出る。

 長く密約を否定した自民党は当然、経過と責任を明らかにする義務を負う。

 行政の透明性が国民の信頼につながるのだが、残念ながらそれもおぼつかない。特に沖縄をめぐる日米交渉に不透明な部分が多いからだ。

 元外務高官の証言によってあぶり出されているのは心もとない民主主義の実態だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-12-03-M_1-005-1_001.html


琉球新報12/3社説(太字等はブログ管理者の編集による)
沖縄密約証言 「国家のうそ」が暴かれた 

外交文書公開の法整備を

 沖縄返還時の日米密約問題で元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が東京地裁の法廷に立ち、返還米軍用地の原状回復補償費を日本が肩代わりした密約の存在を認めた。密約に直接かかわった元政府高官の法廷証言は極めて重い。政府は密約の存在を認めるべきだ。
 吉野氏の証言は、原状回復補償費400万ドル、短波放送中継局VOAの移転費1600万ドルの日本側負担の密約を裏付けた。
 同証言だけでも2000万ドルの巨費を、日本政府は秘密裏に支払っていたのである。国民があずかり知らない巨額の国費支出は犯罪行為に等しい。政府は実態を明らかにする責務がある。

◆疑われる核持ち込み 
 吉野氏証言の密約とは別に、政府は1960年の日米安全保障条約改定での米軍の核搭載艦船の日本通過・寄港を黙認する「核持ち込み密約」の存在を認める方針を固めたとされる。
 米軍の「核持ち込み」が事前協議の対象とされながら、外務省内の調査で「核兵器搭載艦、航空機の領海通過や寄港、飛来は対象外」とする秘密合意を裏付ける文書が確認されたためとされる。
 政府はこのほか、「72年沖縄返還に絡む有事の際の核再持ち込み」などの密約の調査を進めている。いずれも日本、沖縄への「核持ち込み」、沖縄返還時の巨額の費用負担という重要問題である。
 とりわけ「核持ち込み」は国民の安全保障にとって極めて重要な問題だ。国民への説明や議論、コンセンサスが一切ないまま、日米の一部政治家と官僚間で秘密裏に決められた疑いが濃厚だ。
 国民による国政の統治という民主主義の根幹をないがしろにするものというほかない。
 過去の問題と軽視はできない。67年に佐藤栄作首相が「非核三原則」を表明して以降の、核兵器を「持ち込まさず」の国是に反し、事前協議がないまま核持ち込みが行われている疑いが、現在に引き続いているのである。
 国内世論の一部には米国の核の傘を頼み、核持ち込みを黙認する「非核2・5原則」への転換を求める声がある。しかし唯一の被爆国の日本は「持たず、作らず、持ち込まさず」の非核三原則を揺るぎない国是として堅持すべきだ。
 鳩山由紀夫首相は就任前の衆院選挙前に「非核三原則」の法制化を検討する考えを示していた。政府は「核持ち込み」の密約を確認したうえで、日本の国是に反することを再確認し、あらためて米国に対し「核持ち込み」を認めないと通告すべきだ。
 証言後の会見で吉野氏は「過去を忘却して歴史を歪曲(わいきょく)すると、国民にはマイナスが大きい」と語った。国益を損なう密約は存在を確認し、ただす必要がある。
 しかし政府の調査では外務省内の文書探しが難航している。公開を恐れ、2001年の情報公開法施行前に破棄されたとの情報もあるという。諸外国のように政府文書を厳正に保管し、期間を定めて全面公開する法整備が、国民不在の密約をなくすには不可欠だ。

◆変わらぬ自由使用
 沖縄返還をめぐる「有事の際の核兵器の再持ち込み」密約に県民は強い関心を持たざるをえない。
 返還交渉で佐藤首相の密使を務めた故若泉敬氏の回想録は「沖縄に現存する核兵器の貯蔵地、嘉手納、那覇、辺野古、ナイキハーキュリー基地を使用できる状態に維持し、重大な緊急事態に活用できる」と密約を記している。
 日本政府は、米側から事前協議がない以上、核持ち込みもないとの見解に終始している。だが沖縄には原潜の寄港が相次ぎ、核兵器搭載艦入港の疑念をぬぐえない。
 「核も基地もない平和で豊かな沖縄」が本土復帰に懸けた県民の悲願であった。悲願を踏みにじる「核の再持ち込み」を県民は到底、許容できない。
 復帰後も変わらぬ基地の実態は、核再持ち込みを含め、基地の自由使用を担保した密約の存在を疑わせるのに十分だ。吉野氏証言の日本側巨費負担は、米軍に対する思いやり予算の源流とも言えよう。
 密約問題は、在沖基地の維持と米軍の自由使用の実態にかかわる。危険な普天間飛行場問題が、なぜ県外撤去でなく県内移設に押し込まれ続けているのか。
 過去の問題だけでなく現実に国民、県民に不利益を強い国益を損なう問題として、政府は密約の全容を解明し、ただしていくべきだ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-153675-storytopic-11.html


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http://michisan2.ti-da.net/e2885986.html








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Posted by ミチさん at 21:44│Comments(0)沖縄史
 
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