2012年04月27日 00:42
戦略、見積もり欠如 共同文書発表延期
米議会の不満根強く
25日に予定されていた在日米軍再編計画見直しの共同発表は、米上院の有力議員が出した批判声明で急きょ延期された。米軍全体の基本戦略や費用見積もりなどを示さない米政府の対応に米議会が強い不満を表した格好だ。声明を出した米上院のレビン軍事委員長らは米軍普天間飛行場を辺野古に移設する現行計画の実現性を疑問視し、嘉手納基地への統合案を提唱している。現行計画を「唯一の有効な解決策」としてこれまでの方針を変えず辺野古移設を推し進める共同文書に、実現性を担保するよう求めたことが背景にあるとみられる。
「現時点での発表は時期尚早」。国防予算の承認に影響力がある上院軍事委員会のレビン委員長らはパネッタ米国防長官に送った書簡でこう言い切った。再編計画見直しは「正しい戦略上の基本理念と財政的に持続可能な計画により決定されることが必要だ」と発表に待ったをかけた。
レビン氏らが「詰めが不十分」と非難した項目はアジア太平洋地域の米軍全体の戦略構想や海兵隊の役割、空軍の配置といった全体像から、環境影響評価や厳格なコスト計算などの詳細まで多岐にわたる。
これらの提示ついて、国防費削減に取り組む米議会はこれまで政権側に再三要求してきた。昨年12月に可決された2012会計年度国防権限法にも盛り込まれている。同法は在沖海兵隊のグアム移転費の新規計上を認めず、過去分の執行も凍結。解除条件として、普天間代替基地建設の進展とアジア太平洋地域の最新の兵力構成を示すことなどを挙げている。
一方、米政府から発表延期の申し入れで、これまで米国と交渉に当たってきた防衛省、外務省は対応に追われた。防衛省幹部は「想定してはいなかった」と困惑した様子。30日の日米首脳会談に向け、週内に何としても文書を発表したい日本政府の意向がにじむが、発表時期のめどは立っていない。関係者からは「共同文書の発表ができなければ、総理が訪米する意味がなくなる」と影響を懸念する声も上がる。
野田佳彦首相訪米に間に合わせるため急いだ米軍再編見直しの政府間協議は米議会の要求に配慮しないまま進められ、共同文書としてまとめられた。予定していた発表を取りやめた異例のドタバタ劇にはオバマ政権と議会側の対立が色濃く反映し、議会を交えた日米協議の在り方が問われている。(問山栄恵)