2012年02月09日 22:34
[米軍再編見直し]島ぐるみの意思表示を
日米両政府は、米軍再編計画の見直し作業に着手したことを「共同報道発表」の形で正式に明らかにした。
米軍普天間飛行場の辺野古移設と海兵隊のグアム移転を切り離し、グアム移転を先行して進める、という内容だ。
嘉手納より南にある米軍基地の返還も、移設作業の進捗(しんちょく)状況と関係なく進めることになった。
2006年に合意した「米軍再編のロードマップ(行程表)」は、普天間飛行場の辺野古移設と海兵隊約8000人のグアム移転、嘉手納よりも南にある基地の一括返還を一つのパッケージと位置づけている。個別事案は相互に結びついていると、あれほど強調していたにもかかわらず、日米両政府はあっさり、パッケージを放棄した。辺野古移設の見通しがまったくたたないからだ。
この期に及んでも野田佳彦首相は、辺野古移設を堅持する、と強調している。一部全国メディアは「辺野古移設が実現しなければ普天間が固定化される」と、相変わらずの主張を続けている。
見直し作業は始まったばかりだ。この時点で政府が「辺野古移設の堅持」を強調するのはある意味で当然である。結論が出ていないのだから。
だが、パッケージを前提にして辺野古移設に固執し続ければ米軍の利益を損なう―という見方が米政府の中に台頭してきたのは大きな変化だ。
辺野古移設計画を建前として堅持しつつ、しかし現実には、移設が進まなくても不利益にならないよう、事実上、移設を棚上げしたのだ。
米サイドからみれば、パッケージの放棄による辺野古移設の棚上げは、限りなく断念に近い。沖合へのわずかな移動さえ認めなかった以前のかたくなな態度に比べれば、事実上の断念、ともいえる性質のものだ。
にもかかわらず日本政府が相変わらず辺野古移設の堅持を強調している理由はただ一つ。仲井真弘多知事の翻意を期待し、その可能性がある、とみているからである。
一括交付金獲得のための密室協議に見られるように、知事の言動がそのような期待を抱かせているのは確かだ。基地返還後の跡利用を促進するためには、国の協力が欠かせない。そこに辺野古移設との取引の余地が生じる。
海兵隊の先行移転と、嘉手納基地より南の先行返還を打ち出したのは、負担軽減の形を具体的に示すことで地元の軟化を促す狙いがある。
沖縄にとって、普天間の早期返還と辺野古移設の断念は、切り離せないパッケージである。このパッケージをどのようにして実現させるか。
キーマンは仲井真知事である。知事が密室協議を拒否し、民意の先頭に立って断固とした姿勢を示し続けることが、今後の行方を占う上で極めて重要だ。
基地問題をめぐる1995年の「異議申し立て」は、1956年の島ぐるみ闘争の再来だと言われた。それが普天間返還を引き出したのである。今、求められているのは、沖縄からの島ぐるみ闘争規模の意思表示である。
(沖縄タイムス2/9社説、記事原文はコチラ)