(沖縄タイムス7/7)
[公約点検 参院選] いったい争点はなにか
「最低でも県外」という言葉がいまだに脳裏から消えない。
この国で安保・外交政策の公約が果たして実効性のあるものか疑問を抱く。政権交代後の民主党は結局、自民党の政策にすり寄っていった。
衆院選マニフェストで日米関係は「緊密」で「対等」にするとうたい、「言うべきことを言う」(鳩山由紀夫前首相)はずだった。
期待が高かっただけに落胆は深く、そのショックを引きずる中の国政選挙に県民はどう向き合うか戸惑っている。そんな雰囲気ではないか。
日本は安保・外交で中身の論議を忌避してきた。
沖縄に集中する在日米軍をなぜ県外・国外へ分散できないのか、民主党連立政権はまったく説明していない。
鳩山前内閣の迷走で浮かび上がったのは、安全保障で米国の庇護(ひご)を受け続けるために沖縄の民意を踏みつぶすという冷徹な国家主義だった。
その正体を見せつけられた沖縄では、「怒」「差別」といったささくれ立った感情がむき出しになった。
各党に問いたいのは、国のあり方を決める重要な外交・安保政策について、将来展望を国民に示しているかどうか、ということだ。
外国軍基地の問題で首相が辞任する国はほかにない。民主、自民の二大政党はいずれも米軍普天間飛行場の県内移設を進める方針だが、解決の具体策を示していない。
これでは選択肢がない。
県内反対を公約に揚げた共産党と社民党の主張からは、日米関係の今後をどう維持するのかが見通しにくい。
民主党は全国で唯一沖縄選挙区で公認・推薦候補を立てなかった。
県内移設を進める政策を県民に問いかけることすら断念した。
菅内閣は8月中に普天間代替施設の工法を決める予定だが、その政策で影響を直接受ける地元の信を問わないままでは非民主的だ。
自民現職の島尻安伊子氏は普天間の県外移転を主張、新人で社民の山城博治氏と共産の伊集唯行氏も同様に訴えている。
この問題では自民も民主同様に党本部と沖縄県連の方針がねじれている。
政党内で中央と地元の意向が真っ向から食い違う状態が今後も続けば、沖縄でマニフェスト選挙は成り立たなくなる。 基地で対立点がないだけに候補者はもっと具体策を示すべきだ。
県外ならどこへ移転するのか、国外なら米国とどう交渉するのか。分かりやすく説明してもらいたい。
民主あるいは国民新の政権与党は、普天間の県内移転と引き換えに負担軽減策を講じると主張するのなら、選挙を通してその政策を県民に訴えるべきだった。
基地縮小を進めるには基地従業員の配置転換や再雇用をどうするのか、高齢化した零細軍用地主に何らかのセーフティーネットはないかなど、行動計画が不可欠だ。
野党候補は必要な政策を政権にぶつけて、論戦を深めてもらいたい。 (
沖縄タイムス7/7社説)