孫崎享氏が語る「普天間」県外移設案提言
(琉球新報1/12)
グローバル化へ変化 問題悪化で困るのは米国
[東京]鳩山由紀夫首相の私的研究会がこのほど、米軍普天間飛行場移設でヘリ部隊を海自大村航空基地(長崎)に、歩兵部隊を陸自相浦駐屯地(同)に移し、米軍キャンプ・シュワブに陸自部隊を配備する県外移設案を首相に提言した。提言をまとめた孫崎享氏に現在の日米関係などについて聞いた。
―首相にどのような提言をしたのか?
県民の県外移転の世論は極めて強い。世論を無視すると反基地活動の活発化につながり、長期的な日米安保体制の維持にマイナスになる。
在日米軍は米国にこそ重要な役割を持っている。横須賀や佐世保、嘉手納など世界でも最大のものが日本に集中している。その上、基地提供国からの支援では、日本はドイツの5倍、イギリスの30倍の大きな貢献をしている。普天間の問題で日米関係がおかしくなって『では全部出て行く』とはならない。日米関係が悪化し、ほかの基地へ影響が出て困るのは米国の方だ。普天間は在日米軍基地全体の20分の1で、そのために20分の19をなくしていいという論理にはならない。
―提言に首相の反応は?
他の分野の提言も通して『わが意を得たりという気持ちで聞いた』と言われた。普天間の問題にも関係した発言と受け取った。
―日米同盟の現状とは?
沖縄の基地は、単に日本や沖縄を守るという施設ではなく、グローバルな展開へと変遷している。
実は今の日米安保体制を形作っているのは、1960年の安保条約を超えたものだ。それは2005年10月に米国と交わした米軍再編合意の『日米同盟・未来のための変革と再編』という文書だ。安保条約の対象地域が日本と極東だったのが、今は世界全体となった。
安保条約は軍事力の使用は極力避ける国連憲章を基にしていたが、新文書は『国際的安全保障環境改善のため』として、危機が迫っていなくても軍事行動で環境を変えることに合意し、大きな質的変化があった。
―基地問題について沖縄への提言は?
普天間の問題で県民としての意思を明確にした方がいいのではないか。衆院選やほかの選挙でも普天間だけが決定項目ではない。県民投票などで『絶対に(辺野古へは)やめてほしい』と明確にすれば、政府としても米国と交渉する上で、後ろ盾として有効だ。(聞き手 滝本匠)(琉球新報1/12掲載)
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